#1 認知機能障害と医療の在り方 〜恒常性の是正を目指して〜
さまざまな脳神経外科手術を経験し乗り越え、充実した医師としての今日を迎えることができたこと、社会に感謝の毎日です。
そこで、本邦のおかれた超高齢化社会で私に何ができるか!? 恩返ししうるか!? と思いを巡らせている日々でした。気がつけば、「頭の病気としての認知機能障害の方々」が老若問わず大挙して脳外科外来・物忘れ外来を訪れます。 診察で、その物語( : ナラティブ*)に耳を傾けると、多くの受診者が心身のバランスを崩し(恒常性の破綻)、精神疾患と見紛う困憊した姿あり、ひいては家族にも観て取れることに気づかされます。
昨今、巷の医療情報としても、メディアでも“アルツハイマー病”真只中で、特に米国に続いて令和5年日本・中国で認可された新薬情報でもちきりです。抗アミロイドβ抗体薬と言い光明と評されていますが、一方で高額医薬品であること、注射薬であること、投薬適応範囲がとても狭いこと、そして副作用率がとても高いこと(投薬中断せざるをえないもの30〜50%)など懸念を抱えての船出です。一方でその新薬レケンビ®は第12回技術経営・イノベーション大賞において「内閣総理大臣賞」を受賞と公表されました(2025.3.25)。
明らかに新薬の適応ありと診た時に、さらに掘り下げて心身の崩れた恒常性が見えることがとても多い。私の脳裏に浮かぶものは環境、生活習慣を中心とした負の問題点「危険因子」です。さまざまな研究・報告論文からスピリチュアルの概念も含めて分析すると、たくさんの危険因子と鉢合わせしていることに気づきます。
まずは危険因子から回避、恒常性の是正である!ととらえ、そのための医療を勘案します。また、時には漢方薬**投与も視野に入れます。
① 家庭、職場の環境はどうか?身体は動かしているか?ストレスが過重になっていないか? 快眠 快食 快便はどうか?
② 薬まみれになっていないか?
③ 高齢者では、年齢に見合った医療がなされているのか?
などを観てとります。
*物語 : ナラティブ『物語と対話に基づく医療』は、患者の語りを全面的に尊重し、対話に基づく物語(narrative)の文脈から患者の抱えるtroubleに全人的にアプローチする手だてを導き出す医療 / Greenhalgh T et al. : Narrative Based Medicine-Dialogue and discourse in clinical practice . BMJ Books , 1998
**漢方薬kampo medicine:中国由来の医学で日本で発展を遂げた医療。西洋医学、漢方医学それぞれに良さがある。西洋医学が臓器主体の医学であることに比較し漢方医学は心身一如として生体のバランス(恒常性)を是正し自然治癒力(レジリエンス)を発揮できるように働きかける。中国では中医学、韓国には韓医学があるが、日本だけが医師免許取得により西洋薬、漢方薬いずれも処方できる。すなわち東西医学の利点を駆使しうる。